救急医療ジャーナル 救急医療ジャーナル No.29 FEBRUARY 1998 Vol.6より
@救急救命士国家試験の受験資格について、「看護師免許所有者(平成3年8月15日
以前の者に限る。)」という規定がありますが、なぜ、同じ看護師免許所有者に対して
制限があるのですか。経験年数などにより、受験資格を認めることはできないのでし
ょうか。
A救急救命士の資格がない看護師が救急車に同乗していて、患者に静脈路確保や
除細動が必要な状況が発生した場合、責任医師から指示があれば、救急救命士に許さ
れている特定行為を行うことはできるでしょうか。
私は、看護師の診療の補助行為として許されるのではないかと思いますが、もし
できないとすれば、どの範囲までなら許されるのでしょうか。
救急救命士を始め、医療従事者の国家資格を取得するには、国家試験に合格すること
が必要てすが、その資格を付与することができるかどうかを試験のみで判断するのは
困難であるため、受験資格として一定の学習課程や実務経験等が条件とされています。
看護師筆の受験資格に関しましては、救急救命士法(以下、「法」という)附則第
2条で、法施行の際(平成3年8月15日)「現に救急救命士として必要な知識及び技能の
修得を終えている者又は現に救急救命士として必要な知識及び技能を修得中であり、
その修得を法施行後に終えた者」と規定されており、それに該当されている方は、厚
生大臣の受験資格の認定を受けることにより、受験が認められています。これは、法
施行以前、救急救命士養成所がなく、救急救命士かあるいは看護師かという資格
を選択する余地がなかった方に対する特例として認められている措置です。救急救命
士養成所が整備され、資格の選択が可能になった現在は、それぞれの分野でその資格
に合わせた教育が行われているため、上記特例は適用されないことをご理解いただき
たいと思います。
本来、看護師は診療の補助行為一般を業とすることができるので、看護師が
救急救命処置を行っても法令に違反することにはなりません。しかしながら、救急医
療のような専門的な知識を要する分野について、医師の指示の下に特定行為といった
高度に専門的かつ危険性の高い処置を行うためには、やはり救急医療に関する技能・
知識を修得することが望ましいとされています。そのために救急救命士養成所を設置
し、その修了者に受験資格を与えていることも併せてご理解下さい。
貴殿の場合、平成6年に看護師免許を取得されたということですが、平成3年8月15日
時点で正看護師の養成課程を修了していたか、または修得中でその後その課程を修了
していれば、受験資格の認定が可能ですので、再度、入学年月日をご確認下さい。も
し該当されない場合で受験をご希望の場合は、民間の養成所で2年間の課程を修了す
る必要があります(看護師の場合、すでに看護師養成所で履修された科目は免除
を受けることができます)。
次に、Aのご質問についてお答えします。
保肋看法では、看護師が業務を行う場の制限に関する規定はありませんので、看護師の資格があれば、救急車内においても、医師の指示の下、診療の補助行為等
の業務独占行為を行うことが可能です。したがって、看護師は、救急車内で患者
が静脈路確保や除細動が必要になった場合、医師の指示の下、救急救命士に許されて
いる特定行為を行うことは可能です(別問:看護師資格を持つ消防職の救急救命士に認められる救急救命処置について)に対する回答の前半部分を参考にして下さい)。
今日の医療現場においては、医師とともに看護師(准看護師を含む。以下「看護師等」という)、診療放射線技師、臨床検査技師等のコ・メディカルスタッフが一体となって医療の業務に従事し、適切な医療が供給されております。
これらコ・メディカルスタッフは、法律上、医師が独占する医業のー部を、医師の指示に基づいて行うことができることになっており、医師法第n条の規定にかかわらず看護師等であれば「診療の補助」を、診療放射線技師であれば「放射線の照射及び診療の補助として磁気共鳴画像診装置等を用いた検査」を、臨床検査技師であれば診療の補助として「採血及び生理学的検査」を、そして救急救命士であれば診療の補助として「救急救命処置」を行うことができることとなっております。
ここで、「診療の補助」一般を行える看護師と他のコ・メディカルスタッフの業務との関係について、今回の質問にあります救急救命士の行う救急救命処置に焦点を絞ってもう少し説明しますと、救急救命士の業務の内容である救急救命処置は診療の補助行為に含まれますが、この診療の補助行為については、保健
師助産師看護師法第31条第1項及び第32条の規定により、医師、看護師等以外の者が業とすることは禁止されており、このままでは救急救命士が行う診療の補助としての業務は、これらの禁止規定に触れることになります。
そこで、そのような問題の生ずる余地をなくすため、救急救命士法第43条の規定により、救急救命士は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助として救急救命処置を行うことができることになっているわけです。したがって看護師等については、通常の業務の範囲内において、救急救命処置を行うことは可能であると考えられます。
しかしながら、救急救命士が行う救急救命処置は、救急車等による搬送途上において、無線等による医師の指示の下に、その症状が著しく悪化するおそれがあり、またはその生命が危険な状態にある傷病者に対して行うものであり、特定の知識及び技能を要するものであります。したがって、そのような知識及び技能を習得した者が行うことが望ましく救急救命士制度が創設されたものです。こうした経緯を踏まえれば、看護師等が救急車等による患者の搬送途上において救急救命処置を行う場合には、救急救命士と同様の知識及び技能を持つことが望ましいと考えます。さらに、保険医療機関に所属する救急救命士の搬送途上における救急救命処置については、診療報酬上、救急救命管理料が認められております。
なお、救急救命士資格を有する看護師等と他の看護師等とでは行ってよい医療行為に違いがあるかとのことですが、今まで述べてきましたように看護師等としての業務に救急救命士としての業務は含まれており、両者に差異はありません。
質問
私はもともと救急救命士になりたいと思っていましたが、高度な専門知識、技術を修
得してから救急救命士になろうと考え、まず看護師の資格を取得することにしました。
そのため、看護学校もあえて働きながらのコースを選択し、循環器や外科専門の救急
病院にも勤務しました。
そして、平成6年に看護師の資格を取得、念願の救急救命士の国家試験を受験しよう
と受験資格認定について照会したところ、指定条件に該当しないとの返事があり、と
てもショックを受けました。以後、3年近く病院勤務をしていますが、救急救命士の
夢はあきらめきれず、現在、消防官採用試験を受験しようと考えています。そこで、
次のニ点の質問にお答え下さい。回答
まず、@については、救急隊員ばかりでなく、看護師等の医療関係の資格をお
持ちの方々の間でも、救急救命士に対する関心は高く、とくに救急医療機関に勤務し
ている看護師の方々からは、救急救命士の資格を取得したいとの声がよく聞かれ
ます。〈参考〉
◇ 救急医療ジャーナル NO.15 october 1995 vol.3抜粋
現在、看護師には診療の補助行為一般を行うことが法律上認められていますが、救急救命処置はその補助行為一般の中に含まれるのでしょうか。含まれるとすれば、具体的にどのような行為が認められますか。また、救急救命士資格を有する看護師の場合、他の看護師と比べて、行ってよいとされる医療行為は多いのでしょうか。